インターフェース設計の対象を、入力装置や画面上の操作に限定すると、コンピューターが人間の知的作業をどう拡張できるかを捉え損ねる。 CardとMoranは、身体的インターフェース、認知的インターフェース、概念的インターフェース、課題インターフェースの順に対象を広げ、人間が考えを組み立てる過程まで工学的に扱おうとした。
身体的インターフェースでは、マウスの性能をフィッツの法則で説明し、装置の比較結果を「遠い対象ほど大きくする」といった設計判断へ変換した。 認知的インターフェースでは、熟練者が毎回問題を解くのではなく、既知の手順を選んで実行することをGOMSなどでモデル化した。 この発想は、画面の良し悪しを印象で語る代わりに、操作に必要な推論の差から説明する考え方にもつながる。
しかし、既知の手順だけでは未知の課題を解けない。 スタック式計算機の実験では、概念モデルを教わった利用者と手順だけを教わった利用者の成績は定型課題でほぼ同じだったが、新しい解法を考える課題の正答率は前者が67パーセント、後者が25パーセントだった。 概念モデルは普段の操作を速くするためというより、既知の手順が通用しないときに探索できる問題空間を利用者へ与える。
さらに複雑な執筆や設計では、システムの仕組みを理解できるだけでは足りない。 まだ曖昧な考えを書き出し、並べ替え、関係づけることで、徐々に構造を見つけられる表現が必要になる。 CardとMoranが紹介したNoteCardsは、考えをカードとして記録し、箱とリンクとグラフで組み替えることにより、完成した文章の編集ではなく、文章になる前の思考を操作対象にした。
したがって、知的作業を支援するインターフェースは「目的の操作へ速く到達できるか」だけでは評価できない。 利用者が状態を予測できるか、既知の手順が破綻したときに考え直せるか、曖昧な考えを書き出して徐々に整理できるかまでが設計対象になる。 「pointingからponderingへ」という表現は、指示動作の効率化から思考を育てる環境へ、設計単位を広げることを表している。
https://doi.org/10.1145/12178.12189
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