UIにおける「発見できる」は、誰か一人でも操作方法を見つけられるという存在判定ではない。対象ユーザーが特定の状況で、説明や既知の慣習や試行錯誤にどれほど頼らず、意図した次の操作へ到達できるかを表す程度の問題である。
したがって、改善前のUIを使えるユーザーがいたことは、改善後の発見可能性が高いという判断と矛盾しない。改善前の成功者は、似た機械を使った経験があった、表示を時間をかけて読んだ、誤操作から戻った、といった負荷を払っている可能性がある。比較すべきなのは成功者の存在ではなく、対象ユーザー全体における成功率、最初の正しい操作までの時間、誤操作や後戻り、説明を求めた回数の分布である。
また、「何を発見させたいか」は現在の状態とユーザーの目的から決める。すべての操作を同じ強さで目立たせる必要はない。多くの人が次に行う操作へ注意を導きつつ、取消のような副次的な操作も必要な人が探せる状態にする。資料の発券画面の改善案は、まさに操作の有無ではなく、金額を確認してから主操作へ進む順序を画面上の強弱と配置で伝える例として読める。
資料では「発見できる」を「ユーザーが、何をすればいいかが一目でわかる」と説明している。この「一目で」は無時間で理解できるという厳密な合否条件ではなく、正しい操作へ至る探索と推論の負荷が小さいことを初心者向けに短く表した言葉だと捉えるとよい。
発見可能性の測定
定量的に比較するには、対象ユーザー、開始状態、達成したい目的、制限時間、助言の有無を先に固定する。課題文には「発券ボタンを押してください」のように操作名を書かず、「内容を確認してチケットを受け取ってください」のように目的だけを書く。操作名を教えると、UIがその操作を伝えられるかを測れなくなる。
主指標には、制限時間内に助言なしで正しい操作を最初に選べた人の割合を置く。補助指標として、正しい操作までの時間、そこまでの誤操作数、後戻り数、助言を求めた人の割合を記録する。たとえば改善前が20人中12人、改善後が20人中17人なら、観測した範囲では発見率が60%から85%へ25パーセントポイント上がったと表せる。ただし、人数が少なければ偶然による振れも大きいため、差には信頼区間を添える。
時間は成功者だけの平均にしない。難しいUIほど遅い参加者が時間切れになって集計から消え、成功者だけの平均時間が短く見えることがある。時間切れを制限時間として含めた分布、または「5秒以内」「10秒以内」「20秒以内」に発見できた割合を並べれば、この逆転を避けられる。
改善前後を同じ参加者に続けて操作させると、最初のUIで学んだ内容が二つ目へ持ち越される。初見での発見可能性を比べるなら、対象ユーザーを無作為に二群へ分け、それぞれ片方だけを使ってもらう。利用経験によって結果が変わりそうなら、経験の有無も記録して群ごとに見る。
この比較だけでは、すべての操作について改善したとは結論づけられない。主操作を目立たせた結果、取消や修正が見つけにくくなることもある。主操作の発見率を主要な判定材料にしつつ、必要な副次操作や安全に関わる操作について最低限保つ値も先に決めておく。
https://speakerdeck.com/yuichi_hara7/ii-ui-toha-shoshinshamuke-ni-jirei-o-moto-ni-ui-dezain-o-bunkai