日本企業のスタンドアローンDCFが類似会社比較より高くなるのは前提が非対称だからである

会社の価値を求める方法には、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くDCFと、似た上場会社の評価倍率を当てはめる類似会社比較がある。 DCFが会社から将来得られる現金を評価する方法なら、類似会社比較は市場で似た会社に現在付いている価格を基準にする方法である。

買収相乗効果を含めず、対象会社が単独で事業を続ける前提のDCFをスタンドアローンDCFという。 ただし、「相乗効果を含まない」は「現在の業績が変わらない」を意味しない。 値上げ、経費削減、不採算事業の撤退などを単独で実行できるなら、その改善を事業計画に含められる。

この違いにより、DCFは将来の正常化後利益を評価する一方、類似会社比較は現在または翌期の低い利益と現在の市場評価を参照することがある。 名称はスタンドアローンでも、DCFの計画が現状維持より強ければ評価額は高くなる。

割引率の前提も差を広げる。 円建てDCFで低いリスクフリーレートと、市場全体に対する株価の反応が小さいことを示す低いベータから資本コストを見積もり、その一方で強い利益率改善を織り込むと、改善計画の危険性が割引率へ十分に反映されない。 特に、予測期間後の価値である継続価値は割引率と永久成長率の小さな変更に大きく反応する。

さらに、DCFでは余剰現金、政策保有株式、遊休不動産などを事業価値へ時価で加えることがある。 一方、市場は、その資産がいつ株主へ還元されるか、低収益の投資へ使われないかを価格へ反映する可能性がある。 日本企業の現金蓄積と資本効率の関係は、経済産業省の伊藤レポートでも課題として扱われている。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/ito_review__released_august2014_en.pdf

したがって、「DCFは本源的価値を示すから高い」だけでは差を説明できない。 現在利益から正常化後利益への増加、割引率と永久成長率、非事業資産の加算、市場が織り込む資本配分への懸念に分けると、DCFと類似会社比較の差がどの前提から生じたかを確認できる。

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