会社が自社の株式を株主から買い戻す取引を自己株取得という。 会社の現金と発行済株式数が同時に減るため、買い戻した事実だけでは一株価値は増えない。
株式価値100億円、発行済株式数10株、一株価値10億円の会社を考える。 この会社が余剰現金20億円で2株を公正価値どおりに買い戻すと、株式価値は80億円、発行済株式数は8株となり、一株価値は10億円のままになる。
取得前:100億円 ÷ 10株 = 10億円
取得後: 80億円 ÷ 8株 = 10億円
市場価格が公正価値より低いときに買い戻せば、売却した株主から保有を続ける株主へ価値が移る。 市場価格が公正価値より高ければ、反対方向に価値が移る。 どちらも既存株主間の価値移転であり、自己株取得そのものが事業のキャッシュフローを増やしたわけではない。
https://pages.stern.nyu.edu/~adamodar/pdfiles/blog/DataUpdate8for2026.pdf
現実には、自己株取得によって価値が変わる場合もある。 使途のない現金を経営者が浪費する可能性が下がる一方、成長投資に必要な現金まで失えば価値は下がる。 借入金で買い戻せば、支払利息の節税効果と財務危機の危険性も変わる。
一株当たり利益であるEPSは、利益が変わらなくても株式数が減れば上昇する。 そのため、EPSの上昇だけでは価値創造を判定できない。 自己株取得を評価するときは、取得価格、現金の代替用途、取得後の資本構成が生む変化を分けて考える。